月刊メイジン Vol.1 枝肉特集号

出荷した枝肉を観察すると、そのつくりやサシの入り方で飼養管理の改善点が見つかることがあります。今回は、一般的な枝肉の見方と題して茨城県畜連が各ポイントをまとめてみました。

 

 

枝肉とは簡単に言えば牛や豚などが屠畜後のセリにかけられる状態をいいます。それぞれ地域の市場によっても異なりますが、大抵はフックで吊るされ、レーンにずらりと並んだものを指します。そんな枝肉をお肉屋さんがセリ落とし、持ち帰って各パーツごとに分けるのです。

ちなみに和牛では、セリ前に背骨に沿って2分割された枝肉の左側の6番目と7番目の胸椎間を切開します。その時に見えるロースやバラの厚さなどを計測してA~Cの歩留等級を決めます。その他にも枝肉には脂肪交雑や肉色、肉のきめやしまりといった様々な指標があります。それらを総合して1~5の肉質等級を決定します。

 

歩留等級と肉質等級でその枝肉の格付が決まります。

ちなみに茨城県の銘柄・常陸牛はA5~B4までの格付です。

 

 

 

小ザシの綺麗な枝肉

 

出荷した牛の枝肉を見ようと冷蔵庫に入るとよく目にするのが肩の切開面だけをライトで照らして観察している出荷者の姿です。もちろんロース芯のサシ(BMS)がどれだけ入っているかは一番気になることですが、枝肉の価値はロース芯のサシ(BMS)だけで決まるものではありません。

そこでまず大切なことは、その枝肉の全体を眺めることです。ももの張り具合や背や肩の幅など、その牛がしっかり餌を食べてきた体型になっているかどうかです。市場でレーンに並んだ枝肉を遠くから眺めると、各々の体型の違いが顕著にわかります。遠くから眺めて、ももや肩の張り具合が良い枝肉は、大抵切開面を見てもつくりが整いサシもしっかり入っていることが多いです。

しかし枝肉の体型はその牛の血統などに左右されることもあります。胴が短く幅があり中身がしっかり詰まったような枝肉もあれば、枝肉に迫力はあっても胴が長く、「ただ大きいだけ」ということもあります。ただし、どんな牛であっても、しっかり餌を喰い込めば多少なりともそれが体型に現れ、枝肉の肉量やサシに反映されることは間違いないように思います。

 

 

枝肉の体型がしっかりとしたものであれば、次に枝肉の2分体の断面に注目してみましょう。

まずは上の写真にもあるように、ももの断面からは、もも部位にサシが入っているかどうかを見ることができます。ももは一般的にはサシが入りにくい部位なので、この箇所にサシがよく入っていれば当然枝肉の評価も高くなります。逆にサシが少なく色の濃いももはなかなか評価されないのが現状です。

次のポイントは腹です。腹と言っても観察するポイントは様々ですが、ケンネンと呼ばれる腎臓脂の固まりの丁度奥側は、腹の赤肉とサシのマーブリングが見やすい箇所です。腹腔内脂肪が覆うようについていると観察し難い場合もありますが、この箇所にしっかりとサシを確認できれば、肩の切開面もサシが入っていることが多いように感じます。

次のポイントとしてはハシリと呼ばれる背骨の箇所が挙げられます。肉が盛り上がるように骨の隙間からはみ出し、脂の固まりもそれと競うように盛り上がっている枝肉は、大抵はずれることはないでしょう。

 

もものサシをももヌケと呼び、写真のように色が淡くサシがしっかり入っている枝肉はそうでないものと比較すると単価に差が出る場合が多いように感じます。

 

 

 

さて、枝肉の体型から始まり、もも・腹・ハシリと見てきました。ここまでもし順調であれば、その枝肉はきっと肩の切開面はサシだらけになっていることでしょう・・・

なかなかどうしてそう上手くはいかないのが現実です。例えばももヌケが弱かったり、腹内面の脂ののりが薄い、ハシリに迫力がないなど大抵どこかに欠点が見られるものです。しかし時折、前述したポイント(上)がそれなりであっても、下(切開面)にサシや肉量がイマ一つといったこともあります。配合飼料の立上げの遅れやビタミンAに関連した原因をまずは疑うようにはしていますが、もちろんそれ以外の原因である場合も沢山あるので一概には言えません。

 

 

肩の切開面を見てみましょう。まずはサシの入り方に注目します。サシはロース芯やバラ、カブリ、広背筋でサシの入る時期が異なります。よって部位によってサシの入り方にムラがある時は、牛の餌喰いにムラがあるのかもしれません。ビタミンコントロールも含めて改めて飼養管理を見直してみましょう。

 

芯がかんでいる枝肉

その次に枝肉の特徴として挙げられるのが皮下脂肪・筋間脂肪の比較的多いものです。

筋間脂肪は導入牛である場合、導入直後からの飼い直し期間中に脂が落ち切っておらず、その後の配合飼料をどんどん立ち上げていくなかで、栄養分がサシではなく落ち切らなかった筋間に脂肪が蓄えられていくことが原因と考えられます。したがって、牛の出荷販売報告を受ける際に、「筋間かんでますねぇ」と言われることがもし多ければ、飼い直し期間の配合飼料の給与方法を見直すことに改善のヒントがあるかもしれません。

皮下脂肪が厚めについた枝肉は、その牛が出荷前にやる気を出して餌を頑張って喰い込んだことが原因の一つに挙げられます。所謂「後半食べた牛」です。しかし例え皮下脂肪であっても、枝肉重量に換算され、結果売上金額の手助けをしてくれます。だからと言って過剰に皮下脂肪がくっついてしまうと、次はB等級になる可能性も出てくるので、やはり牛の餌喰いにムラの出ないような飼養管理を心がける必要がありそうです。

最後に肉量に関してです。

肉量の乏しい枝肉の原因は、これも原因は様々ですが、筋間脂肪の発達や粗飼料の質が悪かったりするとロース芯が小さかったり、ばらの肉量が乏しかったりします。いずれにしろ粗飼料の喰い込みと配合飼料の適切な給与が大切なようです。

 

 

瑕疵は枝肉の品質を低下させるばかりでなく、最も単価に影響しやすいマイナス要因の一つです。出荷牛に同じ瑕疵が付きやすい傾向にある場合は、改めて飼養管理の見直しをはかってみましょう。

 

表示 枝肉所見
シミ 筋肉に斑状出血
ズル 皮下の浮腫から全身まで多様
シコリ 筋肉の炎症、脂肪変成
アタリ 皮下、筋肉等に出血
割除 炎症部位等の割除
その他 骨折、放血不足、異臭、異色等

 

瑕疵のシコリ

 

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次回の「月刊メイジン」もどうぞお楽しみに!!