米油(こめあぶら)給与牛

 

2010年3月畜産学会にて発表しました!!

日本畜産学会第112回大会(平成22年3月27~30日、明治大学駿河台キャンパス)

演題「米油製剤給与が生産現場における牛肉の脂肪酸組成と枝肉成績に与える影響」

 

オレイン酸の効用

茨城県畜連は、「名人牛」つくりで配合飼料の開発、飼養管理技術の研究などに取り組んできました。特に配合飼料「名人シリーズ」では研究開発で多くの皆様に高く評価をいただいてきております。

最近の黒毛和牛は、牛肉に含まれる脂肪量が以前より10%程多くなってきています。そこで、美味しい牛肉つくりでは、脂肪質が大きなキーポイントになってきています。

脂肪については、あまり硬くなく、口の中でとろけるような脂肪が理想とされており、そのような脂肪の質の牛肉はしつこくなくあっさりとしてたくさん食べることができます。これは、脂肪がどのくらいの温度で融けるかという「融点」が低い牛肉をいいます。

脂肪は、飽和脂肪酸が多く含まれると融点が高くなり(硬くなる)、不飽和脂肪酸が多く含まれると融点が低く(柔らかく)なります。硬い脂肪をつくる脂肪酸は、パルミチン酸とステアリン酸で、柔らかい脂肪をつくる脂肪酸は、オレイン酸、パルミトレイン酸、リノール酸です。
オレイン酸は、オリーブオイルで有名になった脂肪酸ですが、血液をサラサラにするとされている脂肪酸です。
牛肉中のオレイン酸含有量は、牛に食べさせる配合飼料に使う原料の種類によって異なることもわかっています。名人は、長年の研究から名人を食べさせるだけでもオレイン酸を高めているのですが、茨城県畜連では、今までの研究開発のデーターからよりオレイン酸を高めることを目的とした技術開発を手掛けました。

 

米油を利用した技術開発の取り組み

生米糠を使うことで牛肉の脂肪の質を改善できることは最近の研究でもデーターが出てきています。その一方で生米糠は酸化が進みやすく、特に夏場では気温と湿度が高くなるので顕著に酸化が進み、実際の生産現場ではなかなか使うことが難しい飼料原料です。しかし、脂肪の質を改善させるためには、ある程度のレベルの油脂類を給与することが必要になりますので、夏場でも酸化しにくい原料を検討してきました。
米糠から米油を製造し、他にも米糠から有用成分を取り出し研究・販売されている築野食品工業(株)さんより、米油を吸着させた飼料原料を製造していただけることで安定的な原料を使うことが可能になりました。

 

米油を吸着させた飼料原料・米油吸着剤

米油吸着剤を利用することで、安定的な原料を使うことが可能に

 

この米油吸着剤を実際に茨城県畜連直営牧場の黒毛和種去勢牛に給与試験を行いました。
その結果として、米糠から抽出された米油を吸着材用いることで、さらにオレイン酸含有量を高めることが出来る技術を開発し特許を取得しました。(特許番号 第4226644号)

この試験では、延べ140頭を越える黒毛和牛で米油製剤の給与試験を行い、牛の脂肪サンプルを分析した結果から今まで以上にオレイン酸含有量を高めることを証明しました。(図-2参照)すなわち「オレインリッチなビーフ」が誕生したのです。

 

米油給与試験結果(総脂肪中のオレイン酸割合)

 

※米油AとBの違いは、給与量の違いです。(A<B)

※オレイン酸の2%の違いは、食べた時にわかると言われています。

 

最近の研究では、オレイン酸だけでなく不飽和脂肪酸割合やモノ(1価)不飽和脂肪酸(MUFA)が高まると“やわらかさ”や“食感”に影響を与えていることがわかっています。
今回の試験結果から、米油吸着材給与によりオレイン酸だけでなく脂肪中に含まれる不飽和脂肪酸割合を高めて、モノ(1価)不飽和脂肪酸(MUFA)も高まっています。
このことからよりレベルが高い牛肉の脂肪質を作ることができるようになりました。

 

米油給与試験結果(脂肪酸割合)

米油給与試験結果(MUFA割合)

 

この研究開発は、和歌山県の築野食品工業(株)との共同研究により確立したものです。